勅使河原宏の「おとし穴」を見ました。1962年の映画。脚本は安部公房で、音楽監督が武満徹なんだけど、実際に曲を作っているのはなんと一柳慧高橋悠治。ともにまだ20代(!)。一柳先生はジョン・ケージ大先生の元から帰ったきたばっかりのころだから、きっとギラギラしていたはず。そんな彼らにまともな映画音楽が作れるのだろうかと、ドキドキしながら鑑賞しました。


最初に2分くらいのプロローグがあって、タイトルがドカンと現れるのですが、それと同時にチェンバロをぶん殴ったような危険な音楽が鳴り響いてびっくらこきました。凄くかっこよいんだけど、まさに一柳慧高橋悠治。いわゆる現代音楽ってやつの典型的な姿。武満徹を映画音楽をやるときは、実験的であれど、ここまで自己主張をすることはないイメージなんだけど彼らは容赦無し。オープニングだけにとどまらず、プリペアードピアノ(ピアノの弦の上に物を置いたりはさんだりするやつね)とチェンバロを使った即興音楽が満載。

この手の現代音楽は基本的にあまり好きでないんですが、音楽だけをとると非常にかっこよい。けど、映画にあってない。意味がわからん。ヒットマン役の若き田中邦衛(白スーツでかっこいい!)がこれまた若すぎる井川比佐志を追うシーンがあるのだけど、この緊張感溢れるはずのシーンに、アヴァンギャルドすぎる滑稽な調子のプリペアードピアノの音楽が流れ出すのね。結構衝撃を受けた。何これ?こんな狙いの映画じゃなくね?
映画音楽というものは、音楽をつけるのでなく、鳴っている音楽を剥がすのだ!みたいな事を言って、とにかく無駄を省いて音数を少なくする武満先生がよくこれでゴーサインを出したなぁと不思議です。まぁでも曲はかっこよいんだよ、本当に。リズムもタイトで、アヴァンギャルドだけどポップに響いてて。


文句ばっか並べてしまったけど、映画自体はかなり面白かった。映像も演技も素晴らしいし、何より脚本が凄いとおもった。さすが安部公房。勅使河原、安部公房、武満トリオは他には砂の女しかみてないんだけど、他にも何作あるのでそのうち見よう。
ちなみに武満徹安部公房カメオ出演。武満はすぐわかったのだけど、安部公房は顔を良く知らないのでわからんかった。

勅使河原宏の世界 DVDコレクション

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